大切な赤ちゃんを守るために知っておきたいこと

一般向け

 

赤ちゃんって可愛いですよね。それが自分の子や孫となると格別でしょう。
できるだけ幸せに、心地よくスクスク成長してほしい。

そして、子供というのは何もその親だけが守る存在ではないと思います。周りの人、ひいては社会全体で守っていく存在です。

でも、こうして大切に思うからこそ、嘘の情報や根拠のない情報でも簡単に信じてしまいがちですよね。

そこで今回は、乳幼児突然死症候群というものの概要を知っていただいて、赤ちゃんのことを思ってやっていることが実は逆効果かもしれないというお話をしたいと思います。

 

乳幼児突然死症候群(SIDS)とは何か

「『赤ちゃんがお昼寝している間に家事を済ませてしまおう。』
そんなふうにして数時間、お昼寝している赤ちゃんから目を離した。
用事が終わって赤ちゃんの寝顔を観に行こうと寝室に行くと赤ちゃんの呼吸は止まっており、死亡していた...。」

「やっと夫婦の間にできた赤ちゃん。可愛くて、大切で、いつも夫婦と赤ちゃんの三人で寝ていた。
ある朝、目を覚ますと赤ちゃんの呼吸は止まっていた...。」

こんなことが実際に起こっています。
これは別に虐待などではありません。赤ちゃんから目を離すのがいけないとかそんな話ではありません。

これは乳幼児突然症候群というものの例の一つです。

厚生労働省のSIDS研究班によるSIDS診断ガイドライン(第2版)によると、

乳幼児突然死症候群とは、

それまでの健康状態および既往歴からその死亡が予測できず、しかも死亡状況調査および解剖検査によってもその原因が同定されない、原則として1歳未満の児に突然の死をもたらした症候群。

と定義されています。
少しややこしいですが、簡単に言うと明確な原因が不明で赤ちゃんがなくなる現象ということです。
よくSIDS(sudden infant death syndromeの略)と呼ばれています。

SIDSは主に睡眠中に発症することが多く、大体出生児の8000人に1人くらいの頻度で生じています。この数字はなかなか頻度の高い数字だと個人的には思います。

発症する時期としては生後3ヶ月前後が多いと言われています。

 

SIDSの原因と考えられてる説について

SIDSは明確な原因がわからない、乳幼児の突然死であるという話を前述しましたが、SIDSが起こる原因に関してはたくさん研究されています。
そこでメジャーな説について簡単に説明します。

覚醒反応不全

うつ伏せに顔を布団に埋めるようにして寝ると、当然ですが息苦しいですよね。
通常の子なら、息苦しさを感じて顔をあげたり、横を向いたりします。

しかし、一定の割合で、この「息苦しさ」を感じ取れない乳幼児が存在します。
これを「覚醒反応不全」と言います。
この子たちはこのように、睡眠中の息苦しさを感じとり対処することができないので、そのまま窒息してしまうというわけです。

以降、なぜ覚醒反応不全が起こるのかに対する研究の一例を紹介しますが、少々専門的ですので読み飛ばしていただいても構いません。

覚醒反応不全には脳幹障害が関わっているのではないかと考えられています(脳幹障害仮説
というのも、脳幹には睡眠ー覚醒中枢が存在し、SIDSの解剖結果で脳幹異常を伴っている例が多く報告されているからです。

様々な神経伝達物質の関与が疑われていますが、有力なものの一つにセロトニンがあります。

SIDS患者では延髄のセロトニン受容体が欠損していたり、セロトニントランスポーターが過剰発現していることでセロトニン再取り込みが異常亢進し、セロトニンが枯渇した状態になっていたりするのです。
他にもセロトニン系を制御するsubstance Pという物質の関与も疑われています。

この辺りはまだまだ研究がホットの部分ですね。

トリプルリスクモデル

トリプルリスクモデルは、SIDSに対する3つのリスクが存在し、これらが重なるとSIDSを発症するという考え方です。

その3つのリスクとは何かというと、

2〜4ヶ月児であるということ(自律神経中枢が未成熟なのでリスク)
外的ストレス(うつ伏せ寝、フカフカの布団、温めすぎ、添い寝、感染症、睡眠不足等)
脆弱であるということ(未熟児、母親の喫煙、遺伝的多型性等)

の三つです。
「外的ストレス」と「脆弱な子であるということ」は次の項目で説明します。

SIDSの危険因子について

SIDSの危険因子としては大まかに以下の事柄が挙げられます。

乳幼児のうつ伏せ寝
母体の喫煙
・出生後の受動喫煙
・フカフカの布団
・添い寝
・温めすぎ
特に「うつ伏せ寝」「母親の喫煙」「添い寝」はメジャーな危険因子であり、大まかにSIDSの発症確率が5倍ほどに上がります。
実際、イギリスでは1990年代に仰向け寝運動が実施され、その結果SIDSによる乳幼児の死亡が100人当たり3.5人ほどだったところから0.5人ほどにまで減少しました。
また、アメリカでも、うつ伏せ寝を減らす運動をした結果、SIDSの発症率が38%減少しました。
基本的に乳幼児は仰向け寝が好ましいという事ですね。
このうつ伏せ寝とフカフカの布団が危険な理由は、先述の覚醒反応不全です。
乳幼児が覚醒反応不全の場合、うつ伏せやフカフカの布団で息苦しくなっても気づかず、そのまま亡くなってしまう可能性があるという事です。
そしてもう一つが母体の喫煙です。
これは母親が喫煙することによって、乳幼児もしくは胎児の脳幹の発達に障害が生じます。こうして覚醒反応不全になるリスクが高まるということです。
妊娠中の喫煙がなければ、SIDSの子供の3人に1人は助かっていたと考えられています。
一応補足しておくと、妊娠時は母親の喫煙が特に影響しますが、生まれてからの受動喫煙に関しては当然ながら母親のみならず、父親の喫煙もよくありません
決してお母さんだけの問題ではないということは理解しておいてください。

ふわふわベッド、添い寝...それは本当に必要?

僕たち大人は、フカフカのベッドで寝た方が気持ちいいですし、赤ちゃん1人だと寂しそうなので、添い寝したくなります。

でもそれは、生まれたばかりの赤ちゃんにとっては、命の危険でもあるわけです。
自分の子供が覚醒反応不全かどうかなんて見た目にはわかりません。

だからこそ、危険とわかっていることに関しては少なくとも排除することが大切なのではないかと思います。

見た目には少しかわいそうかもしれませんが、赤ちゃんの睡眠環境は、

親と同じ部屋でも個別のベビーベッドを用意し、お布団はフカフカではなく硬めのマット
掛け布団はかけず(真冬で寒すぎる場合などは空調を整える)、枕もなし(枕が窒息や圧迫の原因になるから)。
その上でできるだけ仰向けで寝かせる。

というようにするのが良いということになります。
下の写真のような質素なベッドがいいのでしょうね。

気にし過ぎもよくない

ここまで、少々怖いお話だったと思いますが、大多数の赤ちゃんはこんなふうに亡くなったりはしないということもまた事実です。

フカフカのベッドで寝て育った方もいるでしょうし、昔から両親が喫煙者だったという方もいるでしょう。

赤ちゃんが生まれると、お父さんもお母さんも子供のことで頭がいっぱいになると思います。
「この子は順調に育っているのだろうか」「まだ歩かないけど遅れているのではないか」「話始めない...発達が遅れているのかな」などなど。
心配事はそこをつかないでしょう。

その上で赤ちゃんの命が危ないなんて話になると冷静にはいられないかもしれません。

でもいったん落ち着いてくださいね。

ここにあげた危険因子に関しては、リスクになるということは明らかになっていますし、避けることがそれほど難しいことではありません。
だからまずはこの危険因子は避けることをおすすめします。

とりあえずそれをしたら、SIDSに関して心配しすぎる必要はないと思います。
SIDSということが存在するということを知っておくだけでも全然違うはずです。

もしこれを読んでくださっているあなたが妊婦さん、もしくはお父さんお母さんなら、ここで知ったことを頭の片隅においておく程度で結構ですので、その上でお子さんと接していただけたらと思います。

まとめ

今回は乳幼児突然死症候群について紹介しました。

正しい知識があれば、リスクを下げることができます。

改めて、

・乳幼児のうつ伏せ寝
・妊婦の喫煙
・親の喫煙による乳幼児の受動喫煙
・添い寝
・フカフカのベッド
・温めすぎ

などはできるだけ避けるようにしましょう。

 

 

最後に、大切にお子さんを育てていらっしゃるお父さん、お母さんには本当に頭が上がりません。
妊婦さんに関しては自分の体力を削り、骨格や内臓の位置まで変えて、命がけで出産されるわけです。しつこいですが本当に頭が上がりません。
そんな皆さんの、大切なお子さんを守ることに、少しでもお役に立てていたらこれ以上嬉しいことはありません。

 

今回も最後まで読んでいただきありがとうございました。
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では。。。

参考

アメリカ小児科学会 Safe Sleep Recommendations - AAP.org

厚生労働省 乳幼児突然死症候群に関して

赤ちゃんの原因不明の突然死「SIDS」の発症リスクを低くする3つのポイント

 

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