2020/3/20のNature News and Viewsで取り上げられた、How stress can cause a fever(ストレスがいかにして発熱を起こすか)について、とても面白い記事だったのでシェアしたいと思います。
英語が読める方は、原文で読むのが一番良いので、このページの最下部にあるリンクからNatureのページに飛んで確認してみてください!
心理的ストレスが生理的反応として現れる
皆さんは、心理的・精神的ストレスが生理的反応として現れる例をいくつも体験していると思います。
例えば、大勢の前でプレゼンテーションをするとき、緊張(心理的ストレス)して、ドキドキしたり、手汗をかいたり(生理的反応)しますよね。
他にも、怖い思いをして(心理的ストレス)ぶるぶる震える(生理的ストレス)などもあるでしょう。
このように、心理的ストレスは生理的な反応として現れることがあります。
その中の一つに、
というものがあります。
皆さんはこれ、ピンとくるでしょうか?
個人的な話ですが、僕はこれ、身に覚えがあります(笑)
浪人生の時の秋に入る前くらいの頃、自習室の自分の席に座ると、途端に体が熱くなってしんどくなる時期がありました。
当時は理由はあまりわからず、特に気にせず勉強を続けていたのですが、あれ、ストレスだったんですね。。
とはいえ、どのようなメカニズムで、この心理的ストレスが発熱を起こすのでしょうか。
心理的ストレスが発熱を起こす神経回路
では、心理的ストレスはどのような神経回路を通じて発熱を促すのでしょうか。
神経回路は
という感じです。
視床室傍核は外敵や痛みなどの身体的・精神的ストレス源に対して非常に敏感な部位です。
また、視床背内側核は前頭皮質と関係しており、学習や想像などの複雑な認知機能を媒介している領域です。
では、様々なストレスはどのようにしてDP/DTTに送られるのか。
その伝達は経験による影響を受けるのでしょうか。
DP/DTTの差分がストレスに対する異常反応の原因なのか。
こういった部分がまだ不明確なままです。
悲しいから泣くのか、泣くから悲しいのか
さて、話は心理学の父ともいわれる、ウィリアム・ジェームズの有名な格言に至ります。
「悲しいから泣くのではなく、泣くから悲しいのだ」
というものです。
ウィリアム・ジェームズは気持ちは行動により起こされるという説を唱えました。
さて、もしジェームズが正しいとすれば、恐ろしい状況に身を置いていたとしても、恐ろしさを感じるような生理反応が起きなければ、恐ろしいという気持ちを感じることはないということになりますよね。
ということで、研究者らはDP/DTTから背内側視床下部へのつながりをブロックしたマウスを用意しました。このマウスをブロックマウスと呼ぶことにします。
こうすると、心理的ストレスを受けても、それによる生理的反応は起きなくなります(心理的ストレスと生理反応とを結ぶ神経回路を切断しているから)
さて、攻撃的でより強い他のマウスにこのブロックマウスを攻撃させると、このマウスはどのようになるでしょうか。
普通のマウスが、他のマウスに攻撃されると、さらに攻撃されるのを避けるために、その攻撃してきた大きなマウスを怖がり、避けるようになります。
しかし、もしも攻撃を受けていなければ(攻撃されたことのないマウスをナイーブマウスと呼びます)、攻撃的で大きなマウスに対しても恐れることなく、その大きなマウスに近づいていろいろと調べます(攻撃されたことがないのですから自然ですよね)。
さて、ブロックマウスはどのような行動をとるかというと、攻撃的で大きなマウスに攻撃されたことがあるにもかかわらず、ナイーブマウスと同じ反応を示したようです!
つまり、攻撃されたという経験があっても、恐怖に対応する生理反応がないと、恐怖を感じることがないということです(もちろん、マウスに「怖かった?」と聞くことはできないので、行動から推察でしかありませんが…)。
この実験結果から、緊張するようなシチュエーションにおいて、深呼吸をすることで心拍数を低下させる(生理反応をコントロールする)ことで緊張を和らげるということが理にかなっていると言えますね。
ストレスを感じるような状況に陥ったとしても、ストレスを感じるときに取るような行動を抑制すれば、感じるストレスを軽減することができるかもしれません。
イライラした時に「頭を冷やせ」というのも…正しそうですね!!!
まとめ
いかがでしたか?
気持ちと体の反応がしっかりと関連してるというのは面白くありませんか?
神経科学の発達で、今まで原理のわかっていなかった心理現象の原理がわかるようになってきました。
”気持ち”というあいまいなものをより具体的な形で理解できるようになってきたのです。
しかしそれでもまだまだ、人の心理や精神にはわからないことが山のようにあります。
僕もしっかり勉強して、こうした心理・精神的な部分をサイエンティフィックに解明していく研究者になりたいものです。
今回も最後まで読んでいただきありがとうございました。
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では。。。
参考文献
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